陰部かぶれ、湿疹
沖縄では蒸し暑いこの時期、「陰部の皮膚や亀頭部が赤くなった」、「痒い」、または「痛い」という症状で受診する方は多く、その診断のほとんどが陰部湿疹や亀頭包皮炎です。
陰部は湿度があり、常に体温で温かい上陰毛の毛穴からは皮脂腺(アポクリン腺)が分泌されるため細菌や真菌が繁殖しやすい環境にあります。
また、包茎の方は亀頭と包皮の間に恥垢(ちこう)がたまりやすく、恥垢(ちこう)や汗、おしっこ等を雑菌が分解した結果できるアンモニアが皮膚を刺激して局所のかゆみ、痛み、赤み、腫れ等の原因となります。
その他にも、アレルギー(ゴム製品やゼリー)や感染症が原因となるケースもあります。
陰部が汗でむれないように風通しの良い下着を選択し、汗をかいたらこまめにシャワーに入るなど局所の清潔を保つ事は当然の事、自己判断で手持ちの軟膏薬を使用するのではなく医療機関でしっかりと原因を追究して適切な治療を行いましょう。
膀胱鏡検査は痛いですか?
「膀胱鏡検査は痛いですか。」と患者さんからよく問われます。
単純性膀胱炎等、症状や尿検査で診断が明らかな患者さんに最初から膀胱鏡検査を行うことはありませんが、膀胱がん、膀胱結石、血尿(膀胱出血、腎出血)等膀胱粘膜の病変が疑われる場合にはやはり膀胱鏡検査を行います。
膀胱鏡には硬性鏡と軟性鏡の二つのタイプがあり、硬性鏡は金属でできた棒状の内視鏡で、軟性鏡は胃カメラのようにくねくねと曲がるソフトな材質の内視鏡です。
昔は膀胱鏡といえば金属のタイプの硬性鏡しかなく、特に男性の場合は尿道の長さが約18㎝もあるので、膀胱鏡検査はかなり痛くて辛い検査でした。(硬性膀胱鏡は鉛筆程度の太さがあるので、尿道に金属の鉛筆を挿入する事を想像するとぞっとしますよね。)
私が18年前に勤務をしていた赤十字病院で、同僚のスタッフ(当時40歳代男性)に膀胱鏡検査を施行しました。 彼は膀胱がんの恐ろしさを知っていますので意を決して膀胱鏡検査を受けてくれましたが検査が終わった後、『たとえ膀胱がんになろうと、もう二度と膀胱鏡検査は受けない。』と捨て台詞を吐いて診察室を出ていきました。 硬性膀胱経検査はそれ程きつかったようです。
皆さん、ご安心下さい。 今では、医療機器メーカーの技術開発力の恩恵で痛みの少ない軟性鏡が普及しております。 軟性鏡は硬性鏡に比べて数倍も高価なのですが、「18年前の同僚スタッフの恨み節」が忘れられず、当クリニックでは開業当初から軟性膀胱鏡を導入いたしました。
もし患者さんから「膀胱鏡検査は痛いですか?」と聞かれたら、当クリニックでは「痛くないとは言いませんが、少しだけ痛いかもしれません。」と答えます。
精巣捻転
金タマがねじれて腐れ落ちる病気(精巣捻転)
金玉がねじれて、最悪の場合は精巣(睾丸)の細胞が壊死して摘出する場合もある恐ろしい病気についてのお話です。
精巣(睾丸)の解剖を分かりやすいように、天井からぶら下がった裸電球で例えて説明いたします。
電球は精巣(睾丸)、電気コードは精索(せいさく)に相当します。
電球にあたる精巣(睾丸)は、精子や男性ホルモンを産生する機能を持っています。
そして電気コードにあたる精索(せいさく)には、血管や神経等が通っています。
何らかの原因で、電球が回転すると電気コードがねじれてしまいます。 言い換えれば、精巣(睾丸)が回転し、精索がねじれる事によって、精索内の血管がつぶれてしまい精巣が必要とする栄養分や酸素が遮断されてしまうために時間の経過とともに精巣の組織が壊死してしまいます。
精巣捻転後発症後6時間~12時間で精巣の細胞は壊死してしまうのでその前に修復(ねじれた精索をもとに戻す手術)をしなければ精巣を失ってしまう事になります。
精巣捻転は20歳以下の若い男性に好発します。原因は、生まれつき精巣の固定が弱いためで、正常なら精巣はしっかりと固定されており捻転は起こりません。思春期に頻発し、その理由は二次性徴に伴い精巣が急激に発育することで精巣の重みで精索がねじれるからです。
思春期の子が、「朝起きたら陰嚢が腫れて痛い」、あるいは「運動後に突然下腹部が痛くなった。」と訴えた場合は精巣捻転が疑われますので、早めに泌尿器科、もしくは小児外科で見てもらうようにしましょう。
前立腺がん検査
PSA(前立腺腫瘍マーカー)の異常
人間ドックや検診でPSA値の異常を指摘されると泌尿器科で二次検診を受けるよう指導されます。(または紹介状をもらいます。)
そこでPSAについて簡単に説明をさせていただきます。
前立腺の組織が破壊されるとPSAという蛋白は血液中に漏れ出してしまうため、血液検査でPSAの値が異常高値を示します。
要するに、血液検査でPSAの値が高い場合には前立腺の病気の存在が示唆されるのです。
PSA値が異常高値を示す疾患には、①前立腺肥大症、②前立腺炎、④前立腺がんの3つが挙げられますが、その鑑別診断は泌尿器科専門医で行います。
泌尿器科専門医ならば症状の経過、超音波検査、尿検査、触診(直聴診)で診断は予想がつきますが、がんが疑わしい場合にはさらにMRI検査や針生検を行います。
前立腺がんはもともと欧米に多い疾患でしたが、食生活の欧米化に伴い近年では日本でも罹患率が急増し、2020年には前立腺がんはすべてのがんのなかで肺がんに次いで2番目に高い罹患率になると予想されています。(*1)
いかなる病気も早期発見、早期治療が大切です。 PSA値の異常を指摘されたら躊躇せず早めに泌尿器科を受診してください。
当クリニックでは、同仁病院、浦添総合病院、おもろまちメディカルセンター等と連携しMRI検査を潤滑に行える上、前立腺針生検も当クリニックで施行可能ですのでPSA値の異常を指摘されたら遠慮なくご相談下さい。
(*1)参考資料: 大野ゆう子、中村隆、他.日本のがん罹患の将来推計-ベイズ型ポワソン・コウホートモデルによる解析に基づく2020年まで
尿路結石の手術1 (おなかを切らない手術)
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は腎臓(腎盂、腎杯)、尿管の結石に対して衝撃波を使用して結石を細かく破砕する治療法です。
患者さんはベッドで仰向けになり、水の入った風船のような器械(衝撃波発生装置)を体に密着させ、衝撃波の力を利用して約1時間かけて砕石を行います。
体外衝撃波結石破砕術が日本に導入されたのは1984年で、1985年には一般の治療として厚生省に認可されました。 それまでは尿路結石の手術は開腹術がほとんどでしたので、「お腹を切らない手術」として大変画期的で結石症の患者さんにとってはまさに救世主でした。
体外衝撃波砕石術(ESWL)はどんな石でも治療可能というわけではありませんが、1~2㎝大の結石に対しては効果的で患者さんの負担も少ない(侵襲が少ない)ので適応を誤らなければ現在でも非常に優れた治療法だと思います。
当クリニックは同仁病院と密接に連携をし、結石の検査、手術(砕石術は同仁病院で行います)、術後の再発防止のフォローまで潤滑に行うことができますので、結石症の患者さんも安心してご相談ください。
過活動膀胱
膀胱の働き
膀胱はご存知の通り腎臓から送られてくる尿を一時的に蓄えるための袋状の器官で主に筋肉で構成され、「尿を蓄える役割」の他「尿を排出する役割」も担っています。
排尿は、高度で複雑な神経支配によってコントロールされており、通常100~150㏄の尿が貯まった時点で尿意を感じ始め(初期尿意)、350~450ml程度貯まると強い尿意(最大尿意)を感じてトイレを我慢するのがつらくなります。 言い換えれば、正常な人は350~450ml程度の尿を我慢する事が可能です。
過活動膀胱(OAB : overactive bladder)
数年前からテレビで過活動膀胱の広報が出ているのをご存知ですか? 中でも野際陽子さんのCMは反響が大きく、ご覧になった方が「自分も同じ症状で悩んでいました。」と来院されます。(ちなみに今月からイメージキャラクターは野際陽子さんから藤田弓子さんへと引き継がれました。)
CMで紹介されている通り『トイレが近い(頻尿)』、『急に尿意がおこりトイレを我慢することができない(切迫尿意)』、『急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある(切迫尿失禁)』などの症状がある方は過活動膀胱の可能性があります。 また、それらの症状は水の流れる音を聞いた時、歯磨きをしている時、手洗いや炊事等の水仕事をした時、車の運転中、散歩中等に突然出現する事が多いようです。
日本人では40歳以上の方の約12%(8人に1人)が過活動膀胱と言われており810万人の患者さんが潜在しているとされていますが、多くの方は「恥ずかしいから」とか、「年齢のせいだ」と病院やクリニック等の医療機関へは行かずに放置をしているようです。
過活動膀胱は問診(症状の確認)、排尿量や尿の勢いを調べる検査(超音波や尿流量測定検査)等の簡単な検査で診断できます。 治療としては薬物療法がおこなわれる事が多く、これはかなり有効です。 お薬が使えない方(または使用したくない方)に対しては磁気治療や膀胱訓練等のトレーニングとの併用を行っています。 (当クリニックでは最新型の磁気治療器を導入しました)
最後に
過活動膀胱を我慢する事で生活の質(QOL)はかなり悪化し非常にもったいない話です。 過活動膀胱は適切な治療で改善しますので、これまで悩んでいた方や、年齢のせいだとあきらめている方はぜひ泌尿器科へご相談ください。 きっと「相談をしてよかった。」と思いますよ。
急性膀胱炎について
急性膀胱炎はほとんどの女性が経験するポピュラーな疾患です。 活動性の高い女性に多く、症状は突然起こるため忙しさにかまけて放置、または我慢をしていると症状はますます悪化し、泣き出したくなる程激しい下腹部痛に襲われることがあります。
症状は
膀胱炎で良くみられる症状は
腹痛 下腹の不快感や痛みがある
頻尿 オシッコが近くなる
排尿痛 オシッコが出る時に不快感や尿が漏れそうになる・オシッコが終わる際にツーンと焼けるような痛みがある
残尿感 排尿後もすっきりしない まだおしっこが残っている感じ
尿の異常 尿のにごり 血尿
といったものです。 特徴的な症状経過より一度膀胱炎を経験された方は素人でも診断の予想は容易です。
検査は怖い?はずかしい?
急性膀胱炎は特徴的な症状から診断は容易に予想できますが、医療機関では確実な診断を行うため尿検査を行います。 「膀胱炎の検査が怖い」、または「恥ずかしいので病院には行かない」と言う方がいますが、通常は尿を提出するだけで下着を脱いで診察を受けることはまずありません。
尿検査 採尿方法について
尿検査は検尿カップに尿を採取して提出するだけの簡単な検査です。
女性の場合は、帯下(おりもの)や尿道周囲に付着した垢や粘液、雑菌等が混入しやすいので、上手に採尿するにはいくつかのポイントがあります。 まず、トイレに座り股を軽く開き、(右利きの場合)左側の手指で外陰部を広げて右手で持ったコップに尿を採ります。 尿検査では中間尿を用いますので出始めの1/3程度の尿(初期尿)はトイレに流し、途中の尿(中間尿)を採取します。 できれば尿道口(オシッコの出口)を清拭綿などで陰部を拭いてから排尿するのが望ましいとされますが、清拭綿の代わりに水でしめらせたティッシュで外陰部をふき取るのも良いでしょう。
治療
急性膀胱炎の診断が確定したら治療は抗生剤の内服を行います。 普通の膀胱炎であれば数日間の服用で治りますが、なかなか良くならない場合や、短期間に膀胱炎を繰り返す場合は他の原因を考えて追加の精査を行います(繰り返す膀胱炎の項を参照)
応急処置
「深夜や休日に膀胱炎の症状がはじまった場合にはどうしたらいいか」とよく知人から電話で相談を受けます。 悪寒戦慄を伴う発熱および全身倦怠感や食欲不振が強い場合は腎盂腎炎や菌血症を起こしている可能性があるので救急病院を受診した方が安心ですが、軽症であればまず水分を多く摂取する事です。 水分を多く飲む事で尿量が増え、排尿とともに膀胱内の細菌を洗い流す事によって膀胱炎の症状を和らげます。 排尿痛がつらい時には、鎮痛剤(カロナール、アセトアミノフェン、ロキソニン等)が一時的に有効です。 ただし鎮痛剤はあくまでも症状の緩和をするだけで膀胱炎の根治とはならないので、応急処置後は早めに医療機関を受診し抗生剤を処方してもらいましょう。 薬局で購入できる膀胱炎の薬には漢方薬や生薬がありますが、軽症で初期の場合にのみ効果は期待されます。
原因は
尿道(オシッコの出口)の周囲には大腸菌等目に見えない細菌が常在しています。 たまたま尿道から細菌が侵入し炎症を引き起こした状態が膀胱炎です。 健康で体力がある人は尿道から細菌が侵入しても免疫力で撃退しますが、逆に睡眠不足、過労、ストレス、感冒、便秘、下痢等により抵抗力が低下した方は膀胱炎にかかりやすくなります。
膀胱炎を予防するには
膀胱炎にかかりやすい方は生活習慣に問題がある事が多いので以下の事項に注意していただきたいと思います。
尿を我慢しない
尿意を感じたら我慢をせずに排尿をする事。 膀胱に菌が侵入すると、時間と共に細菌はどんどん増殖していきます。 排尿する事により細菌も排出されるので、膀胱炎の進行も抑えられます。 特に性行為の後は膀胱に菌が侵入しやすく、排尿をせずに入眠すると翌朝までに膀胱内の細菌が繁殖し膀胱炎にかかるリスクが高まります。
水分摂取
水分を多く取ることで、尿量が増えて排尿と同時に細菌も体外へ排出します。 1日の尿量を1500ml以上保つように飲水を心がけましょう。
陰部の清潔を保つ
生理用ナフキンやタンポンは汚染したら早めに交換をする。大便の後は前から拭くようにしましょう。
体調管理
過労、ストレス、暴飲暴食、風邪、便秘、下痢、下半身の冷え等抵抗力が下がらないような体調管理に気をつける。
繰り返す膀胱炎
再発を繰り返す膀胱炎は、膀胱結石、膀胱がん、間質性膀胱炎、婦人科疾患、大腸がん等重大な病気が隠れている可能性がありますので、尿細胞診検査、超音波検査(エコー検査)等の精密検査を行う必要があります。 抗生剤を飲んでも治らないからといって次々と病院を変えていき、漫然と薬だけ飲んでいるうちにがんが進行してしまった患者さんを知っていますので注意してください。
最後に
急性膀胱炎は早めに診断をつけて対処をすればすぐに治る病気です。 診察では痛い検査や恥ずかしい思いをする事は通常ありません。 膀胱炎が気になったら早めに受診していただきたいと思います。
血尿、尿潜血について
血尿とは尿に赤血球が混ざった状態をいいます。
患者さんは、「検診や人間ドックで尿に血液が混ざっているといわれた。」あるいは「実際に赤い尿がでた。」との訴えで医療機関を訪れます。
尿中の赤血球が微量で、肉眼では血尿に気付かないものを顕微鏡的血尿といい、一方で肉眼でも尿が赤く見える場合には肉眼的血尿といいます。
顕微鏡的血尿(尿潜血)、肉眼的血尿、いずれにも泌尿器科の病気が隠れていることがありますので放置するのは賢明ではありません。
顕微鏡的血尿(尿潜血)は検診やドックでは約10%の方に見られ、そのうちの4%に膀胱がん、腎臓がん、前立腺がん、尿路結石症など、何らかの泌尿器科的疾患が見つかります。
顕微鏡的血尿(尿潜血)の患者さんが泌尿器科を受診された場合、どのような検査が行われるかといえば、
①超音波検査:膀胱内に尿を貯めて腎臓、尿管、膀胱の異常を調べる。
②尿検査:血尿の程度を調べる。
③尿細胞診検査:尿の中に浮遊している細胞を顕微鏡で観察し、悪性細胞(がん)や炎症性疾患(膀胱炎など)の有無を調べます。
ほとんどの方は、これらの簡単な検査(痛い検査はありません)で診断がつきます。しかし、これらの検査で、がんや、結石などの病気が疑われた場合にはさらに膀胱鏡検査、CT検査、MRI検査などで確実な診断をおこないます。
検診で顕微鏡的血尿を指摘された患者さんのうち、約90%は精密検査の結果特に大きな問題は見つからず経過観察を行うことが多いので過度に怖がる必要はありませんが、どのような病気でも早期発見、早期治療が大切ですので、血尿や尿潜血が見られたら症状が無くても早めに泌尿器科を受診することをお勧めします。
俳優の松田優作さんは39歳の若さで膀胱がんのために亡くなりました。
病院を受診した時には既に進行がんだったようです。がんの初期には血尿や頻尿等の症状があったはずです。その時点で早めに泌尿器科を受診し、適切な検査を受けていれば根治できていた可能性は高いと思います。誠に残念でなりません。
松田優作さんの死は当時医学生であった私が泌尿器科医になるきっかけであった事を最後に加筆させていただきます。
泌尿器科はどんな科?
疾患多様 気軽に受診を
泌尿器科とは一体どんな科であるのか、ご存じの方はいまだに少ないように思われます。戦前の日本では皮膚科と泌尿器科はいっしょになっており「皮膚・泌尿器科」として診療を行っていました。
そして戦後になってアメリカから近代泌尿器科学が入り、泌尿器科と皮膚科はそれぞれ独立、泌尿器科においては内視鏡を使った手術の分野でめざましい発展を遂げてきました。最先端の技術として手術用ロボット「ダヴインチ」を使った「ロボット支援手術」が前立腺がんに対して既に本県でもスタートしています。
とはいうものの、終戦後1946年から58年ごろまで日本では、公認もしくは非合法的に売春が行われていたため性病が多かった事もあり、泌尿器科=性病科、すなわち「下の病気、性の病気」という負のイメージが強く、特に高齢者の方の中にはまだまだ敷居が高く、受診しづらい科のようです。
泌尿器科では、男性および女性の尿路(おしっこの通り道)、および男性の生殖器の疾患を専門的に扱います。われわれが生きていく上で体内に生じた老廃物が尿として腎臓→尿管→膀胱→尿道を経由し体外に排出されますが、その機能がうまくいかない状態が泌尿器科の病気なのです。泌尿器科でよく扱う疾患について具体的に挙げれば、①膀胱炎 ②血尿、尿潜血 ③頻尿、尿失禁(尿もれ)④前立腺疾患(前立腺炎、前立腺把大症)⑤尿路結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石等)⑤男性生殖器(ペニスや陰のう)の皮膚症状 ⑥こう丸炎、副こう丸炎 ⑦性病 ⑧男性の性機能障害(ED・勃起不全)⑨がん(腎臓がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、陰茎がん、精巣腫瘍等)⑩副腎腫瘍 ⑪末期腎不全に対する血液透析、腎臓移植などがあります。
また、最近男性更年期障害としてマスコミ等で紹介され注目されている⑫LOH症候群の問い合わせも増えてきました。このように泌尿器科で専門的に扱う疾患は多種多様であり、老若男女誰でも一度は経験する疾患が多いのです。 これまで一般の方へ泌尿器科の疾患および診療内容の啓発を怠ってきたきたわれわれも反省すべき点がございます 。あらゆる病気は早期発見、早期治療が大切です。気になる症状かあれば、今後は気軽に泌尿器科を受診していただきたいと願います。
子どもの包茎 多くは成長で解決
男の子の包茎を気にする親からしばしば相談を受ける事があります。包茎とは、ペニスの先端を包む皮膚の口が狭いため亀頭を完全に露出できない状態をいいます。米国では新生児期または乳児期のうちに包茎の手術(環状切除術)をする風習があり、イスラム教やユダヤ教では宗教上の理由で新生児期に手術(割礼)が行われています。
では「子どもの包茎は早めに治療をしたほうが良いのか」という疑問について考えてみましょう。
本来新生児の陰茎は包茎の形をしており亀頭と包皮がくっついているのが正常で、成長とともに亀頭と包皮が徐々にはがれてきて亀頭が露出するようになります。
亀頭が完全に露出するまでには個人差があり、包茎の割合は生後6カ月で80%、1歳から5歳の幼児では約60%とされています。
思春期(14~15歳ごろ)でも完全に亀頭が露出しない子は少なくありません。以上の事から、子どもの包茎はほとんどが年齢とともに自然に亀頭が露出してくる事が多いため放っておいても良いと思います。しかし次の場合には治療が必要となりますので注意してください。
(1)包皮の癒着が強く、尿が出し辛く排尿の妨げとなる場合。排尿の際に、亀頭と包皮の間に尿がたまってしまい、おちんちんの皮が風船のように膨らんで、おしっこの線も細くなることがあります。
(2)亀頭包皮炎。亀頭部と包皮の間にたまったあかに細菌が繁殖し炎症をおこした状態をいいます。陰茎は赤く腫れあがり、膿(うみ)が出て痛みを伴うようになります。
(3)膀胱(ぼうこう)炎や腎盂(じんう)腎炎等の尿路感染症を起こしやすい場合。
(4)嵌頓(かんとん)包茎を起こす場合。包皮を無理に引っ張って亀頭を出した場合に、包皮がもとに戻らなくなっておちんちんの先が締め付けられ腫れてくることがあります。これを嵌頓包茎といいます。なおこの状態が長く続くと亀頭部の血行が悪くなり組織が壊死(えし)しますので早急にもとに戻してあげなければいけません。
このような場合、かつては手術をしていましたが今ではステロイド軟膏(なんこう)を塗りながら狭くなった包皮を少しずつ広げていく治療(包皮ほんてん指導)が広く行われています。両親が時間をかけて包皮の皮を伸ばし、亀頭を露出させてあげる根気の要る方法ですが多くの例に効果があります。ただしこつがありますので泌尿器科医、小児外科医、小児科医等に相談してみるのが良いでしょう。(名城文雄 なしろハルンクリニック)
沖縄県医師会編[命ぐすい耳ぐすい](967)『2014年12月19日沖縄タイムス掲載」