血尿とは尿に赤血球が混ざった状態をいいます。
患者さんは、「検診や人間ドックで尿に血液が混ざっているといわれた。」あるいは「実際に赤い尿がでた。」との訴えで医療機関を訪れます。
尿中の赤血球が微量で、肉眼では血尿に気付かないものを顕微鏡的血尿といい、一方で肉眼でも尿が赤く見える場合には肉眼的血尿といいます。
顕微鏡的血尿(尿潜血)、肉眼的血尿、いずれにも泌尿器科の病気が隠れていることがありますので放置するのは賢明ではありません。
顕微鏡的血尿(尿潜血)は検診やドックでは約10%の方に見られ、そのうちの4%に膀胱がん、腎臓がん、前立腺がん、尿路結石症など、何らかの泌尿器科的疾患が見つかります。
顕微鏡的血尿(尿潜血)の患者さんが泌尿器科を受診された場合、どのような検査が行われるかといえば、
①超音波検査:膀胱内に尿を貯めて腎臓、尿管、膀胱の異常を調べる。
②尿検査:血尿の程度を調べる。
③尿細胞診検査:尿の中に浮遊している細胞を顕微鏡で観察し、悪性細胞(がん)や炎症性疾患(膀胱炎など)の有無を調べます。
ほとんどの方は、これらの簡単な検査(痛い検査はありません)で診断がつきます。しかし、これらの検査で、がんや、結石などの病気が疑われた場合にはさらに膀胱鏡検査、CT検査、MRI検査などで確実な診断をおこないます。
検診で顕微鏡的血尿を指摘された患者さんのうち、約90%は精密検査の結果特に大きな問題は見つからず経過観察を行うことが多いので過度に怖がる必要はありませんが、どのような病気でも早期発見、早期治療が大切ですので、血尿や尿潜血が見られたら症状が無くても早めに泌尿器科を受診することをお勧めします。
俳優の松田優作さんは39歳の若さで膀胱がんのために亡くなりました。
病院を受診した時には既に進行がんだったようです。がんの初期には血尿や頻尿等の症状があったはずです。その時点で早めに泌尿器科を受診し、適切な検査を受けていれば根治できていた可能性は高いと思います。誠に残念でなりません。
松田優作さんの死は当時医学生であった私が泌尿器科医になるきっかけであった事を最後に加筆させていただきます。