急性膀胱炎はほとんどの女性が経験するポピュラーな疾患です。 活動性の高い女性に多く、症状は突然起こるため忙しさにかまけて放置、または我慢をしていると症状はますます悪化し、泣き出したくなる程激しい下腹部痛に襲われることがあります。
症状は
膀胱炎で良くみられる症状は
腹痛 下腹の不快感や痛みがある
頻尿 オシッコが近くなる
排尿痛 オシッコが出る時に不快感や尿が漏れそうになる・オシッコが終わる際にツーンと焼けるような痛みがある
残尿感 排尿後もすっきりしない まだおしっこが残っている感じ
尿の異常 尿のにごり 血尿
といったものです。 特徴的な症状経過より一度膀胱炎を経験された方は素人でも診断の予想は容易です。
検査は怖い?はずかしい?
急性膀胱炎は特徴的な症状から診断は容易に予想できますが、医療機関では確実な診断を行うため尿検査を行います。 「膀胱炎の検査が怖い」、または「恥ずかしいので病院には行かない」と言う方がいますが、通常は尿を提出するだけで下着を脱いで診察を受けることはまずありません。
尿検査 採尿方法について
尿検査は検尿カップに尿を採取して提出するだけの簡単な検査です。
女性の場合は、帯下(おりもの)や尿道周囲に付着した垢や粘液、雑菌等が混入しやすいので、上手に採尿するにはいくつかのポイントがあります。 まず、トイレに座り股を軽く開き、(右利きの場合)左側の手指で外陰部を広げて右手で持ったコップに尿を採ります。 尿検査では中間尿を用いますので出始めの1/3程度の尿(初期尿)はトイレに流し、途中の尿(中間尿)を採取します。 できれば尿道口(オシッコの出口)を清拭綿などで陰部を拭いてから排尿するのが望ましいとされますが、清拭綿の代わりに水でしめらせたティッシュで外陰部をふき取るのも良いでしょう。
治療
急性膀胱炎の診断が確定したら治療は抗生剤の内服を行います。 普通の膀胱炎であれば数日間の服用で治りますが、なかなか良くならない場合や、短期間に膀胱炎を繰り返す場合は他の原因を考えて追加の精査を行います(繰り返す膀胱炎の項を参照)
応急処置
「深夜や休日に膀胱炎の症状がはじまった場合にはどうしたらいいか」とよく知人から電話で相談を受けます。 悪寒戦慄を伴う発熱および全身倦怠感や食欲不振が強い場合は腎盂腎炎や菌血症を起こしている可能性があるので救急病院を受診した方が安心ですが、軽症であればまず水分を多く摂取する事です。 水分を多く飲む事で尿量が増え、排尿とともに膀胱内の細菌を洗い流す事によって膀胱炎の症状を和らげます。 排尿痛がつらい時には、鎮痛剤(カロナール、アセトアミノフェン、ロキソニン等)が一時的に有効です。 ただし鎮痛剤はあくまでも症状の緩和をするだけで膀胱炎の根治とはならないので、応急処置後は早めに医療機関を受診し抗生剤を処方してもらいましょう。 薬局で購入できる膀胱炎の薬には漢方薬や生薬がありますが、軽症で初期の場合にのみ効果は期待されます。
原因は
尿道(オシッコの出口)の周囲には大腸菌等目に見えない細菌が常在しています。 たまたま尿道から細菌が侵入し炎症を引き起こした状態が膀胱炎です。 健康で体力がある人は尿道から細菌が侵入しても免疫力で撃退しますが、逆に睡眠不足、過労、ストレス、感冒、便秘、下痢等により抵抗力が低下した方は膀胱炎にかかりやすくなります。
膀胱炎を予防するには
膀胱炎にかかりやすい方は生活習慣に問題がある事が多いので以下の事項に注意していただきたいと思います。
尿を我慢しない
尿意を感じたら我慢をせずに排尿をする事。 膀胱に菌が侵入すると、時間と共に細菌はどんどん増殖していきます。 排尿する事により細菌も排出されるので、膀胱炎の進行も抑えられます。 特に性行為の後は膀胱に菌が侵入しやすく、排尿をせずに入眠すると翌朝までに膀胱内の細菌が繁殖し膀胱炎にかかるリスクが高まります。
水分摂取
水分を多く取ることで、尿量が増えて排尿と同時に細菌も体外へ排出します。 1日の尿量を1500ml以上保つように飲水を心がけましょう。
陰部の清潔を保つ
生理用ナフキンやタンポンは汚染したら早めに交換をする。大便の後は前から拭くようにしましょう。
体調管理
過労、ストレス、暴飲暴食、風邪、便秘、下痢、下半身の冷え等抵抗力が下がらないような体調管理に気をつける。
繰り返す膀胱炎
再発を繰り返す膀胱炎は、膀胱結石、膀胱がん、間質性膀胱炎、婦人科疾患、大腸がん等重大な病気が隠れている可能性がありますので、尿細胞診検査、超音波検査(エコー検査)等の精密検査を行う必要があります。 抗生剤を飲んでも治らないからといって次々と病院を変えていき、漫然と薬だけ飲んでいるうちにがんが進行してしまった患者さんを知っていますので注意してください。
最後に
急性膀胱炎は早めに診断をつけて対処をすればすぐに治る病気です。 診察では痛い検査や恥ずかしい思いをする事は通常ありません。 膀胱炎が気になったら早めに受診していただきたいと思います。