「膀胱鏡検査は痛いですか。」と患者さんからよく問われます。
単純性膀胱炎等、症状や尿検査で診断が明らかな患者さんに最初から膀胱鏡検査を行うことはありませんが、膀胱がん、膀胱結石、血尿(膀胱出血、腎出血)等膀胱粘膜の病変が疑われる場合にはやはり膀胱鏡検査を行います。
膀胱鏡には硬性鏡と軟性鏡の二つのタイプがあり、硬性鏡は金属でできた棒状の内視鏡で、軟性鏡は胃カメラのようにくねくねと曲がるソフトな材質の内視鏡です。
昔は膀胱鏡といえば金属のタイプの硬性鏡しかなく、特に男性の場合は尿道の長さが約18㎝もあるので、膀胱鏡検査はかなり痛くて辛い検査でした。(硬性膀胱鏡は鉛筆程度の太さがあるので、尿道に金属の鉛筆を挿入する事を想像するとぞっとしますよね。)
私が18年前に勤務をしていた赤十字病院で、同僚のスタッフ(当時40歳代男性)に膀胱鏡検査を施行しました。 彼は膀胱がんの恐ろしさを知っていますので意を決して膀胱鏡検査を受けてくれましたが検査が終わった後、『たとえ膀胱がんになろうと、もう二度と膀胱鏡検査は受けない。』と捨て台詞を吐いて診察室を出ていきました。 硬性膀胱経検査はそれ程きつかったようです。
皆さん、ご安心下さい。 今では、医療機器メーカーの技術開発力の恩恵で痛みの少ない軟性鏡が普及しております。 軟性鏡は硬性鏡に比べて数倍も高価なのですが、「18年前の同僚スタッフの恨み節」が忘れられず、当クリニックでは開業当初から軟性膀胱鏡を導入いたしました。
もし患者さんから「膀胱鏡検査は痛いですか?」と聞かれたら、当クリニックでは「痛くないとは言いませんが、少しだけ痛いかもしれません。」と答えます。